成長ホルモンとは
成長ホルモンは、脳下垂体で作られて血液中に分泌されるホルモンで、192個のアミノ酸が決まった並び方で鎖のように並んでできているペプチドと呼ばれるたんぱく質です。肝臓に働いてIGF-1(インスリン様成長因子-1)と呼ばれる成長因子を作らせて血液中に放出させます。
また成長ホルモンは、その名の通り0歳~10代の子供時代に背を伸ばす効果があります。13歳~17歳前後(個人差あり)の思春期には体内分泌量が最大となりピークを迎えます。
その後は20歳を超えて成人期には50%以下にまで低下、その後の10年ごとに14%ずつ減少していき、40歳を超えますと10代の5分の1から7分の1にまで減ってしまい、70歳代では思春期ピーク時の30%以下の分泌量となってしまいます。これが老化や意欲低下の一因となります。
成長ホルモンは生涯を通じて分泌されており、身長への作用以外に脂肪組織や筋肉など全身に働いて、代謝の調節、筋肉量、身体機能を正常に維持するとともに、心理的な多幸感を持たせる働きをしています。このため、加齢によって成長ホルモンの分泌量が減ることで、様々な健康的な不具合が出てくることになります。
この成長ホルモン、遺伝子工学の技術が進んだことにより1990年代後半に人工合成ができるようになり、子供の「成長ホルモン分泌不全性低身長症」の治療に用いられ普及したものです。成人に投与しますと、加齢に伴い衰えた容姿、体力、意欲の回復効果などを得られることが判り、これらの治療にも使われています。
- 不眠の解消、良質睡眠の確保
- 容姿の回復・・・肌のハリの回復
- 髪や爪がつややかになり、伸びるのが早くなる
- 筋力の向上・・・筋肉の持続力、瞬発力が高まる
- 体力の向上、疲労回復力の向上
- うつ状態、心理的な落ち込みからの回復
- 引き籠もり状態からの回復、外出意欲の向上
- ダイエット、内臓脂肪を減らす治療
- 女性のバストアップ、不妊症治療
- 男性の精力の回復、精子量の増加
- 子供の背を伸ばす治療
成長ホルモン剤は医師の指示のもと注射(インスリンのような腹部への自己注射)で投与されますが、口腔内からも血中へ吸収されることから舌下スプレーが扱いやすく便利です。ただし、ボディビルダーのような見せる筋肉を作る場合には、血中に持続高濃度を作る必要があることから注射による投与が必須です。
ちなみにこの成長ホルモンは、スポーツの世界においてはドーピングとなるので、プロスポーツ選手を目指したり現役であるのなら原則使用禁止です。
成長ホルモンの投与方法
成長ホルモンは、睡眠中あるいは日中に1~3時間おきに血液中に分泌され、分泌と休止を繰り返し、分泌されると成長ホルモンの血中濃度はスパイク状に上昇し落ちます。このスパイクは、10代の最大期には1日に10回以上ありますが、60代になると1日に1~3回の血中濃度の上昇と少なくなります。
この分泌と休止を繰り返すのは、成長ホルモンがレセプターに受容されるとレセプターの数は過剰な反応を阻止するために減少してしまうことから、そのレセプターが復活するために休止相があり、レセプターが復活すれば再びホルモンが分泌されるという流れになるためです。
また、成長ホルモンの分泌量は日中よりも夜間帯に増加、特に入眠直後の22時~2時がゴールデンタイムとされています。睡眠中は深睡眠の周期と関連したパルス状の分泌を示すことから、成長やお肌の潤いなどには睡眠の質が大切なのがここからわかります。
成長ホルモンを投与する方法には、皮下注射と舌下投与の二種類があります。ただし皮下注射は、インスリンと同じような自己注射用の注射器が必要となることから、医師の指示の元でないと入手は難しく、現実的ではありません。
成長ホルモンは注射で投与しますとジワジワと血中へとにじみ出て、肝臓でIGF-1に変換され持続的な血中高濃度を作り出します。IGF-1による蛋白同化作用が主作用で、骨や筋肉・皮膚への高い効果が得られる傾向にあります。
IGF-1はもともと、畜産で赤みの筋肉を増やす目的で使われていました。ボディビルダーが筋肉を増強するために使うのに有用ですが、IGF-1はインスリンと同様に血糖値を下げる効果があり、使用量を間違えると低血糖を引き起こすことがあります。
成長ホルモンは口腔内粘膜からも吸収されることから、舌下投与をしますと血中濃度が急激に上がり成長ホルモンそのものの作用が主作用となります。こちらの方が、血中濃度が急激に上がり落ちるスパイク状となることから、人体の自然な分泌状況には近く、直接成長ホルモンが作用するようなバストアップや脂肪の燃焼といった作用に効果があります。
成長ホルモン投与による副作用はあるのか
「成長ホルモン」と聞いて真っ先に思い浮かべるのは、成人に投与すると「背が伸びるのではないか?」ということだと思います。
事実、成長ホルモンは10代の成長期には骨の軟骨成長板に働いて骨を長軸方向に伸ばすことができます。ですが、普通に思春期の後半に成長板が完成すると骨端線が閉鎖することから、成長ホルモンが働いても骨は長軸方向には伸びなくなります。
つまりは、一度身長の伸びが止まった成人に成長ホルモンを投与しても、背は伸びないということになるわけです。ただし、注射による異常な量の投与では、血中の持続高濃度を作り出されることから、長期連用により「血糖値の上昇」「手根管症候群」「末端肥大症」のリスクがありますが、普通に医師の指示の元で用量・用法を守って使用している範囲であればそのような異常大量投与になることはありません。
成長ホルモンは若返る良いことばかりではなく、厄介な点は狙って筋肉だけを大きくできる薬ではないということです。骨格筋だけでなく心筋も大きくなる結果、心臓全体が大きくなり不整脈を伴う狭心症で突然死の可能性があります。
舌下投与による血中濃度のスパイクを作り出す投与方法では、初めて投与したときだけ稀に一瞬の軽い血圧低下がみられ、「クラっ」としためまい的なものを感じることがありますが、2回目投与以後はなくなります。
舌下による投与方法では長期連用が可能です。ただし、こちらも異常な大量投与を長期間行うと、末端肥大症のリスクが高まります。「異常な大量投与」とは、1か月分(30mL)を2~3日で使い切ってしまうような使用で毎日投与し続ける投与量のことです。
また舌下による投与では、口腔内に残った製剤はそのまま飲み込むのですが、成分はたんぱく質ですので経口から投与された分は胃で分解されるため効果はありません。
成長ホルモンの投与で一番注意するのは、やはり悪性腫瘍でしょう。身体の組織全体を成長させてしまうため、癌の芽があれば同様に働きかけてしまいます、若い人の癌の進行が早いのもそのせいです。
悪性腫瘍に対しては、定期的に癌マーカーを血液検査で調べながら早期発見をするしかありません。
成長ホルモンによるバストアップ
20歳超えの成人女性に成長ホルモンを投与しますと、2~3週後にバストのハリと痛みを感じ、1~2ヵ月後には急にバストアップする人が現れます。いわゆる10代思春期のバストの成長が再現されることがあります。
これは、10代の思春期にはまだ発現していなかったラクトゲン受容体に成長ホルモンが働きかけることで、乳腺が発達して脂肪が付くことでバストが大きくなるためです。このため、すでに巨乳の人にはこの作用は現れません、思春期にラクトゲン受容体が出来上がっており成長ホルモンが作用していたためです。
この成長ホルモンによるバストアップは、貧乳・微乳の人に限って一定の割合で見られます。つまりは、成長ホルモンが最大に放出される10代では乳腺にラクトゲン受容体が十分に現れなかった、20歳を超えてラクトゲン受容体が出来上がったと時には、すでに成長ホルモンの量が半減しており十分にバストへ作用できなかったということになるわけです。
成人後の成長ホルモンによるバストアップでは、女性ホルモン増によるバストアップ(妊娠等)とは異なり、一度大きくなったバストは成長ホルモンの投与を中止しても元のサイズには戻りません。10代に大きくなったバストが、成人後に小さくならないのと同じです。
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成人後の微乳・貧乳に限り成長ホルモンを使ったバストアップ
胸はバストアップケアでは大きくならない 微乳・貧乳の方のバストアップの悩みは、そのほとんどの人は胸の谷間ができる1~2カ ...
成長ホルモンの投与を始めてから、2~3週間後くらいから乳腺の成長痛が始まり、2ヶ月~3ヶ月くらいでバストがジワジワと大きくなり始めます。ある程度、DカップかEカップくらいの大きさまで大きくなりますと豊乳化は止まりますが、中には成長ホルモンを投与し続けることでさらに大きくなる人もいます。
バストは大きくなり過ぎますと普通の生活にも影響を及ぼしますので、大きくなり過ぎる前に目標のサイズになったところで成長ホルモンの投与を中止します。
なお、この成長ホルモンによるバストアップは、全ての人に対して見られるものではなく、一定の確率で起きるもので、まったく反応しない人もいます。
成長ホルモンでダイエット!ウエストを痩せる
若い頃、10代20代の頃は痩せていてスタイルが良かったのに、30歳あたりから急に太り始めた・・・という人は少なくないはずです。これは、加齢と共に25歳頃より半減する成長ホルモンによるものです。
若い頃には皮下に脂肪がつきやすいのに対し、加齢により成長ホルモンの分泌量が減ってきますと内臓のまわりにつきやすくなります。これが内臓脂肪と呼ばれ、ウエスト回りが太くなりクビレの無い寸胴体型になってしまいます。
健康診断の結果で、医師から「健康のために痩せなさい」と言われている人は多いと思われます。健康診断の項目に「腹囲」があるのもこのためで、内臓脂肪は「メタボリックシンドローム」と呼ばれ、さまざまな生活習慣病の原因となり、高血圧・糖尿病・高脂血症などの生活習慣病を発症します。
内臓脂肪型肥満が大きく影響して、いくつもの弊害を併発する場合が多いのです。
成長ホルモンは、別名痩せホルモンともいわれて、代謝を促進します。
成長ホルモンの分泌を増やすことは、脂肪が燃焼しやすい体づくりにつながるのです。
睡眠をとっている間は、成長ホルモンが刺激されて脂肪が分解されるといわれています。個人差はありますが、しっかり眠ると1日で300キロカロリー程度を消費するとも考えられているのです。
内臓脂肪が減る・・・小腸周囲のホルモン感受性リパーゼの活性化
成長ホルモンを投与すると、次のような効果が得られます(舌下から吸収させる投与方法)
(身体に作用することが証明されて医薬品として承認されていますが、下記のそれぞれの効果を感じるのには、100人中何人という確率論が前提として存在します。また、成長ホルモンの効果は、容量依存性の要素を持っていますので、投与量の影響も受けます。ご了承ください)
筋肉の持続力、瞬発力が高まるので、アマチュア競技ではドーピング薬物に認定されています。有効量を投与すると、長距離走や水泳のタイムがよくなります。日常生活的には疲れにくくなり、疲労回復力も高まります。いつもエスカレーターを使っている人が階段を駆け上ろうか、という気分になったり、あの坂道はしんどかったのにラクになる、という気分になったりします。ただし、競技に参加している人には、ドーピング目的では処方いたしません。
若者が繁華街で盛り上がっている姿を見かけます。「何かいいことありそうな予感がしてウキウキする」という脳の状態になっているのです。成長ホルモンを投与すると、その気持ちになって、「前向きになる」「ポジティブになる」「くよくよしなくなる」「積極的になる」「億劫でなくなる」というふうになり、活動性が高まります。
眠りが深くなり、熟睡感が高まって、朝から元気になります。夜中に1~2回、目が覚めていた人が、まったく起きなくなることもしばしばです。
バストに対する効果は、ラクトゲン受容体との兼ね合いによります。うまくいくと、投与後数日から3週間の間に、バストのハリを感じます。投与を続けると、その後、3か月後まで、しわじわとバストアップします。ただし、まったく反応しない人も多くいます。
成長ホルモンは元来、筋肥大や筋肉増強に関与すると思われ、アスリートやボディービルダーが好んで使用していましたが、最近では運動後の脂肪分解により大きく関わっているという見方が大勢を占めるようになってきました。安静時の人に投与することでも脂肪細胞を分解し、血中の脂肪濃度が亢進することがわかっています。つまり成長ホルモンを分泌させ脂肪細胞を分解し、血中のエネルギー源として運動により燃焼させることで効果的に減量できるわけです。