強力な女性化効果が得られる合剤ピル
MTFが女性化を希望する場合に使用する際のピルは、「プレモン」+「マレフェ」が効果と安全性のバランスがよく緩やかに女性化作用があるため、ホルモン剤を初めて使用する初心者向けとされています。最初からいきなり強力なピルを服用しますと、急激にホルモンバランスが変化してしまい、頭痛やめまい・吐き気といった心身の副作用が出やすいためです。
その強力な"ピル"とされるのが第3世代と呼ばれる「ダイアン35」であり、そのジェネリック薬の中でも最も安く一番人気の製品が「スーシー」です。1箱1,000円程度となります。
「プレモン」+「マレフェ」では2剤を服用しなければならないのですが、ダイアン35同様に強力な卵胞ホルモンと黄体ホルモンの2種類が合剤となっており、この1剤だけで女性化ができるのが大きな特徴です。
- プレモン(天然ホルモンのため安全性が高い)
卵胞ホルモン:プレマリンと同じ結合型エストロゲン
1錠0.625mg/1.25mg(1日服用量 2.5mg~3.75mg) - マレフェ
黄体ホルモン:メドロキシプロゲステロン酢酸エステル(天然の20~50倍の強さ)
1錠10mg(1日服用量 2.5~10mg)
ダイアン35
- 卵胞ホルモン:エチニルエストラジオール0.03mg
- 黄体ホルモン:シプロテロン酢酸0.15mg
スーシー
- 卵胞ホルモン:エチニルエストラジオール0.035mg
- 黄体ホルモン:酢酸シプロテロン2mg
スーシーが最強と言われるゆえんは、ダイアンよりも容量が上がっている点にあります。
エチ二ルエストラジオールはエストラジオールの100倍の強さ、酢酸シプロテロンはプロベラの12倍の強さがあります。(いずれも女性器で生産されるものと同じ天然の女性ホルモン)
成分量は少なくても成分自体が非常に強力であることから、1日1~2錠で十分な女性化効果があります。血中濃度の半減期を考えて1日2回、12時間ごとに服用するのが一般的な服用法です。
1日3回で服用する方もいらっしゃるようですが、多く服用して血中濃度を上げたからと言って、女性化が早まるということはありません。むしろ健康リスクを上げてしまいます。
スーシーの特徴
スーシーの半減期は
- エチ二ルエストラジオール 11時間
- 酢酸シプロテロン 38時間
この血中半減期に合わせて服用します。
・ホルモンバランスが安定するため体への負担が減り体調も安定する。
・24時間常に女性化効果が発揮され、最も早く女性化が進む。
女性ホルモンは、よく知られているように2種類あります。
- 卵胞ホルモン:エストロゲン
脂肪を蓄え丸みを帯びた女性らしいカラダを作り、水分を取り込みツヤがありきめ細かな透き通った肌を保ちます。 - 黄体ホルモン:プロゲステロン
妊娠や生理に関わるホルモンで、乳腺を発達させる働きがあります。
バイオアベイラビリティは平均45%
「バイオアベイラビリティ」というのは、経口から摂取した薬剤がどのくらい血中へ到達するのかという割合です。
経口から摂取された薬は、胃や腸から吸収されずに排泄されたり、肝臓で分解・代謝されて体内で作用する前に排泄されてしまいます。この割合が高いほど、血中へ到達して体内で作用する容量が多く効果が高くなります。静脈注射が100%となります。
エチ二ルエストラジオールは平均45%なので半分ほどが効果を発揮することになります。ちなみに飲み薬のエストラジオールは5%ですので、45%という数字は錠剤タイプの中では突出して高い数値となります。
スーシーで女体化するポイント
「スーシー」は、卵胞ホルモンと黄体ホルモンの働きをする2種類のホルモンが、合剤として配合されていることがその最大の特徴になります。このため、「プレモン」+「マレフェ」のように2種類の女性ホルモンを服用しなければならないところ、1種類1錠でその女性化効果を得られる点に利点があります。
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1男性ホルモンを抑える:酢酸シプロテロン
直接的な女性化の作用はありませんが、酢酸シプロテロンは抗男性ホルモンであることから、「男性ホルモンの生産を抑制」し、わずかに生産される「男性ホルモンの働きを阻害」します。また乳腺を発達させるのも、この黄体ホルモンです。全ホルモン剤の中で最も強力な部類に入ることから、使用には注意が必要です。
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2女性らしい体つきに変化する:エチ二ルエストラジオール
女性ホルモン値が上昇しますので、服用を続けると徐々に「筋肉量の減少」「脂肪が付き丸みのある女性体型になる」「きめ細かな透き通った皮膚になる」「細くしなやかな髪質」「体毛が薄くなる」「皮脂の分泌が減り体臭が変わる」などの変化が現われます。
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3乳房が発達、大きくなる
10代前半の少女と同じようなバストの発達が見られ、胸(乳腺)の痛みや圧迫感を感じる場合は胸が大きくなる前兆です。黄体ホルモンが乳腺を発達させ、卵胞ホルモンがその乳腺を保護するように脂肪を付けます。つまり、バストカップを大きくしたいのであれば、いかに乳腺が発達できるかにかかっています。が、発達の程度は純女性と同じく個人差が大きく、遺伝や体型などに大きく左右されほとんどの人がA~Bカップだと言われています。
女性化、女体化を行うには、男性ホルモンを抑えることが最も効果的で重要なポイントとなります。バストが大きく発達・成長しない理由には、この男性ホルモン値が落としきれていないためです。
テストステロンの基準値
男性 277~1111 ng/dl
女性 16~86 ng/dl
女体化のためには、75ng/dl以下になることが望ましい
エストラジオールの基準値
男性の本来の基準値 16~71 pg/ml
女性の本来の基準値 16~331 pg/ml
女体化のためには、20~200pg/mlの間に収めるようにします、範囲内に収まっていれば数値は特に気にする必要はありません。
純女性でも10~400pg/mlと月経周期で激しく変動します。数値が高ければその分、女性化が進行するというわけでもない点に注意です。
女性化/女体化へのリスク、スーシーの副作用
女ホルの摂取でよくある副作用
スーシーを服用しますと、男性ホルモンの低下による男性機能の減退が主な副作用です。これは不可逆的であり、一度進行しますと元には戻らないことを覚悟しなければなりません。
- 性的機能不全
性欲の低下・減退、長期の服用で勃起不能になる可能性があります。 - 生殖能力低下と精子形成障害
精液が透明になり精子が生産されなくなり、精子の機能に影響が出ます。 - 頭痛、吐き気、倦怠感等
服用初期、ホルモンバランスの変化により体調が悪化します。2~3ヶ月で身体が慣れてきます。 - 精神的な不安定
うつ病になる可能性があります、生理前~の女性と似たPMSのような精神状態になることがあります。 - 抗アルドステロン作用
アルドステロンは副腎皮質ホルモンの一つで体内の水分量を増やす働きがあります。結果として女性のようにむくみやすくなります。体液量、血液量が増えるので高血圧に注意する必要があります。 - 便秘
水分を溜め込むため腸内の水分吸収量が増え、女性並みに便秘になり易くなります。
スーシー服用で特に命に関わる重大な副作用
「クスリ」は逆から読むと「リスク」となります。どんな薬でも"神"ではありませんので、命の危険と隣り合わせであることを忘れてはいけません。
特にホルモンバランスを崩すということは、生命の摂理に反することでもあり、相応の危険をはらんでいるということにもなります。これが、医師の指導無しにホルモン剤を個人輸入で始める「フライング」が推奨されない大きな理由となります。
- 肝臓への大きな負担
全ての薬は経口からの服用後と体内を巡った後の2回、肝臓を通り分解・代謝されます。この際に肝臓機能へ負担をかけることから、長期服用の場合には定期的に肝機能(GOT,GPT,γ-GTP)を監視する必要があります。 - 血栓症
エチ二ルエストラジオールは他の女性ホルモンよりも特にリスクが大きく、肝臓の通過時に血液の凝固系を活性化させてしまいます。これにより血栓(血の塊)ができやすくなり、場合によっては死に至ることもあります。
下肢の深静脈でできた血栓が足が動き出すと共に脳・心臓・肺などへと飛び、脳梗塞、心筋梗塞、肺塞栓症など(エコノミークラス症候群)を引き起こします。妊娠中の女性などは、女性ホルモン値が1万~3万以上と異常なくらいに上がることから、要注意となる疾患です。 - ビタミンB12欠乏症
ビタミンB12は造血、神経細胞の核酸やアミノ酸の合成に関与しています。これが不足すると貧血や、神経の働きが低下するため手足のしびれ、集中力の低下、気分が塞ぎやすくなるといったうつ症状の原因となります。 - 高プロラクチン血症
プロラクチンは妊娠中や出産後の授乳期に沢山作られ、母乳を作る乳腺の発育や母乳の産生を促します。血液中のプロラクチン値が高値になった状態を高プロラクチン血症と呼び、薬剤、甲状腺機能低下症、下垂体の病気、視床下部の病気と原因は大きく4つあります。乳汁漏出が認められる場合には要注意です。 - 骨の成長が遅くなります
女性ホルモンが骨成熟を抑制するため、未成年者が使用した場合に身長が伸びなくなる可能性があります。 - 乳がん
女性ホルモン作用により、男性でも乳がんになる確率が女性並になります。親族に乳ガンになった方がいる場合には、服用量には注意が必要です。
スーシーを薦める理由
「スーシー」は、「ダイアン」と同じく第3世代ピルと呼ばれています。現在では、より安全性が高い超低容量ピルの第4世代ピルが登場していますが、MTFには新世代ピルはお勧め出来ない理由があります。
世代分けは黄体ホルモンの成分によって分けられており、第4世代は男性ホルモンの活性化作用が全く無くなっています。ならば、第4世代を服用するのがMTFには最もよいよう思われますが、実際にはそうではありません。
それは、世代が上がるほどに血栓症のリスクが増すことにあります。血栓症のリスクを回避するのであれば、古い世代の方が良いということになります。第4世代ピルの血栓症リスクは、第3世代の2~3倍にもなります。
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女性ホルモン投与で女体化最大のリスク、命にも関わる「血栓症」
経口ピルの長期摂取でリスクが高まる血栓症 "男の娘"の女性ホルモン投与による「女性化」「女体化」には、大きなリスクが存在 ...
女性化・女体化の効果と血栓症のリスクとのバランスを考えますと、価格も安くジェネリックも普及している第3世代ピルがMTFには適していると考えられます。また、大勢のMTFさんが使用していることもあり、得られる情報も豊富ということになります。
注意ポイント
本ページに記載されている内容は安全を保証するものではありません。また、記載内容によるいかなる責任も負いかねますのでご了承ください。