体温計が必須となった日常
一般家庭には、必ず体温計の1本くらいはあるものです。これが昔なら水銀の実測体温計、最近であれば予測型の電子体温計です。
普通ならこれらの体温計は、年に1回風邪をひくかひかないか、寝込むようなことにならなければ、救急箱にしまわれて戸棚の中やタンスの上にしまわれており、めったに出てくることはありませんでした。
ところが、昨年2020年春の「新型コロナウイルスのパンデミック」以降、発熱を警戒するためにこの「体温計」が常に手が届く範囲に必須となったのでした。
新型コロナウイルスの特徴の一つに、罹患すると発症して自分がウイルスを放出する前、まだ無症状の時に一瞬だけポーンと熱が上がりまた平熱に戻るのです。この前兆を捉えるために、すぐに熱が測れる状態にしておかなければならなくなりました。
この一瞬の前兆を捉えるために、人が集まりリスクが高くなる職場や学校などでは毎日朝夕の検温を求められるようになっています。
この2年あまり、熱が出て新型コロナを疑いPCR検査を受けた人は多いのではないでしょうか。
1年以上が経ち、ようやく体温計を購入
そこで我が家でも、「予測体温計があったよね」と探したのですが、これが無い!?
しばらく使わなかったことから、どこかへ行ってしまった。たぶん、家族の誰かが熱を計るのに定位置から引っ張り出して、そのまま戻さずに置きっ放し、何かの片付けか整理かで定位置ではないどこかへ仕舞い込まれてしまった、といったところではないかと思うのです。
そこで、オムロンの耳の穴で計測する体温計「けんおんくんMC-510」を引っ張り出したのですが、これが意外と使い難いのです。少しでも斜めになっていたりしますと、エラー表示になったりと何度もやり直さないといけなく、イライラしてきます。
この使いにくさが、使われずに仕舞い込まれてしまった原因です。見事に電池が切れていました、使いたいイザという時にさらに使えない。
予測体温計も無いことから、じゃぁ体温計をAmazonでポチろうかと思ったのですが、このパンデミック禍ではどこも売り切れで、すでに入手困難となっていたのでした。アルコールを始めとしてマスク、SpO2モニターなど市場から次々と消えていました。
で、少し落ち着いてきた最近になってようやく買えた、というわけです。今ならSpO2モニターも普通に手に入ります、こんなの医療機関か高齢者の介護施設でもなければ必要は無かったものなんですけどもね。
信用できない非接触型体温計の計測値
さて、今では一般的となりました非接触型体温計、このおでこで測る非接触型の体温計は、先ほどのオムロンの耳の穴で測る体温計と原理的には同じで、表面から出る赤外線で温度を測っています。イベントやお店などに入る際に、係員がピッとおでこで測ってくれるアレです。
非接触型は、簡単でお手軽に測れて良いのですが、計測条件に大きく左右されるという大きな欠点があります。また、機器によってはこの計測条件にあまり左右されないものから、大きく左右されるものまで、様々なメーカーがあります。
このあたりは、センサーの精度や予測プログラムの差となり、当然ながらお値段に反映されることとなります。医療機関などで使われるものは、数万円と高価になります。
老人介護施設などで使用する場合には、毎日の計測となることから前日や比較する時点との違いが判れば問題は無く、普段からどの程度熱が上がったか下がったのかが判れば良いので、医療機関ほどの精度は求められません。熱が出ていることが判明した時点で、実測型で正確な熱を計ればよいのです。
で、非接触型の体温計の計測値が信用出来ないのには、昨年の新型コロナ禍において苦労して手に入れた3,000円台前半の「でこピット」という非接触型の体温計の計測値が全然クソだったからです。
この体温計は、もともと乳幼児用のようで成人に使うのには適さないのかもしれませんが、それにしても計測値がめちゃくちゃ低く出るのです。乳幼児と成人、何が違うのでしょう?
平熱が36.2℃前後と判っているところで、でこピットで測ると35.7℃とか低いのです。他の人を測ってみても、同じく低く計測されるのでした。
Amazonでのコメントでは高く計測されるというものが多いようで、それでも評価は「アテにならない」と惨憺たるものになっているようです。検索上位に来るBlogなどの「お勧め○選」などにも入っているところがあるようですが、この結果を見ますとBlogでは本当に検証して選んでいるのかが疑わしいのでした。単にアフィリエイト目的としか思えません。
その他にも非接触型の体温計では、寒い外から部屋の中へ入ったばかりや、汗をかいている時などは低く計測されます。計測面からの距離が遠い場合なども、低く出る時があります。
いつでもすぐに測れる手軽さは捨てがたい非接触型体温計
とは言え、毎日頻回に測るとなりますと実測型の4分、予測型でも1分は長いです。一瞬で測れる非接触型の利便性は捨てがたいものがあります。
かといって、医療機関が使用するような精度の高い、数万円もするような非接触型体温計は、一般家庭ではなかなか手が出ません。
そこで、数千円のものでも実測型と比べてどの程度の差があるのかを、調べて使えば問題はないと考えます。
ネットで検索をしてみますと、よくお店やイベントの入り口などで使われているのを見るものから、聞いたことがないメーカーまで、様々な赤外線タイプの非接触型体温計があります。
お店やイベントの入り口などで使われているようなガングリップタイプの体温計は、家庭では大きく少々仰々しいことから、手のひらに収まるくらいが使うにはちょうどよい大きさでもあります。
問題はその計測精度で、やはりここは体重計や血圧計など家庭用の計測器ではお馴染みの、タニタの体温計を選んでみました。
タニタの非接触型体温計を実測型と比較
先ほども書きましたように、非接触型体温計には医療機関で使用するような精度は求めてはいません。毎日、あるいは1日内で数回計測する際に、前日あるいは前回と比較して何度違うのかということが判れば良いのです。
そこで、ガリスタンの実測型と比較をしてどの程度の違いが出るのかを確かめます。
比べてみたところ、タニタの非接触型BT36.2℃に対して、実測型ではBT36.25℃くらいでしょうか。その差は0.1℃以下となりました。その後も何度か試してみましたが、やはりこのタニタの非接触型体温計BT-452では0.1℃くらい低く出るということが判ります。
同時に、非接触型は条件によっても結果が変わることから、おでことの距離を接近と離して何度か計測してみます。そうしますと、最も接近させると0.1℃高く、5cmくらい少し離してみても温度は変わらないという結果となりました。
このタニタの非接触型体温計は、4,000円前後のお値段の割にはなかなか精度はいいようです。室内においては十分に使えるレベル、満足のいくレベルです。
評価には高く出て使えないという声もありますが、修理や交換しても変わらなかったりと、その理由はわかりません。寒い外から帰ってきたばかりや入浴直後などは、皮膚表面が冷えていることから、低く表示される傾向にはあります。
タニタ非接触型体温計500シリーズの型番の違い
タニタの非接触型体温計500シリーズには、「540」~「545」など末尾が異なる型番がいくつかあります。これらの違いは、何なのでしょうか?
普通に考えれば、型番が大きい方が機能が多かったりするのですが、見た目は一緒でボタンの数などにも違いはありません。記憶できるメモリの数の違い?あまりメリットは感じません。
実はこの型番の違いで、機能に違いはありません。違いは計測ボタンが「ブルー」と「アイボリー」の2種類のみで、外観は好みで選んで構いません。
型番の違いはタニタのメーカー都合で、流通ルートの違いで番号の末尾が分かれているとのことのようです。家電量販店やドラッグストアルート、ホームセンターのルートなどで型番が分かれているようです。
- 540:ホームセンター、日用品店
- 541:家電量販店
- 542:ドラッグストア
おそらくは、543以降は2021年モデルだと思われます。543以降は、現在の通販で販売されている主流、540~542は昨年2020年モデルのようで在庫処分で大量に安く売られている場合があります。(そんな何台も要らないですけど)
体温計なんかは1年や2年でスマホのようなそれほど劇的な機能進化などあるはずもなく、型遅れの前年モデルであっても機能的な差異はそんなに無いはずです。543以降、今年の新型モデルは4,000~5,000円前後と価格が上がっているような気がしますが、前のモデルとの違いが判りにくいです。
仕様諸元表を細かく確認しますと、「使用環境」が以前の「16℃~」が「10℃~」となっています。価格コムの口コミでも、他社製品と比較して批判をされていただけに、パッケージの修正をしてきたといったところでしょうか。
おそらくは2020年モデルとではメカニズムの面からは違いは無いかと思います。口コミで16℃~が批判をされたことから、マージンを削っただけと思われます。
つまりは、2020年モデルでも10℃~使用はできるということです。メーカーは保証をしませんけれども、というわけです。
その他の性能や外型寸法などには、全く変わりは無いようです。
昔の水銀体温計などは早めの処分を
現在、水銀を使用した体温計や血圧計は、安易に廃棄できなくなっています。
2013年に水俣条約が採択され、それに伴い2015年に水銀汚染防止法が公布、2020年12月31日以降は水銀体温計は原則製造禁止となっています。なお、販売・使用については規制されていないことから、通販などでは投げ売りされているようです。
2018年頃には、環境省によって退蔵された水銀使用製品の回収促進事業が行われており、早期回収が求められています。
今後は、水銀使用製品の製造が禁止されたことと、回収が進めば退蔵される水銀使用製品の数も少なくなることから、廃棄処理の際のコストが高騰する可能性があるとのことです。このため、もし水銀使用の体温計や血圧計などを持っているのなら早めに処分しておくことをお勧めします。
水銀製品の処分の仕方は、お住まいの自治体の指示に従ってください。
ガリスタン実測体温計の使い勝手
さて、その製造が禁止された水銀体温計の代わりとなるのが、ガリスタン体温計です。
「ガリスタン」とは、ガリウム68.5%+インジウム21.5%+スズ10%の合金で、人の体温で溶ける液体金属です。また、肌に触れても無害で、蒸気圧が低く高熱にさらされても気化しないことから安全です。
それで水銀と同じように使える液体金属であることから、ガリスタン体温計の使い方は水銀体温計と同じです。熱を計るには腋下などに挟み、表示を下げるにはケースに入れて振ります。
そのメリットは、
- 電池不要のためイザという時の電池切れが無い
- 電子部品を使用していないことから丸洗いや消毒OK、落下などの衝撃に強い
- 劣化部品が無いため長持ち、災害時などに最適
- アナログ体温計は実測のため誤差が少ない
ガリスタンという液体金属は、水銀と比べて若干硬い金属であることから、振って下げる際に多少力がいることくらいです。ただ、この部分もデメリットと呼べるほどのものではなく、普通に水銀体温計と同じように使えます。
予測式電子体温計に慣れてしまっていますと、計測時間4~10分は長いですし、メモリが角度によっては見えにくかったりもします。このあたりは、慣れも必要でしょう。
非接触型体温計タニタの使い勝手
手で握るにはちょうど良い大きさで、握った瞬間に計測ボタンが親指の下へ来ます。女性の手でも、持ちやすいと思います。
計測ボタンを1回押して電源ON、少し待って表示部のLEDが青く光りスタンバイ状態となります。そこでセンサー部をおでこに近づけて、再び計測ボタンを1回押してすぐ離せば計測完了、1秒ほどで「ピッ」と音が鳴って体温が表示されます。
表示窓も数字が大きく出るため見やすく、青いバック照明も点きますので暗いところでも見えます。計測後は、そのままでしばらく放置しておけば、10秒ほどで「ピー」と音がして自動で電源が切れますので便利です。
計測場所はおでこの他、手首の裏側などでも体温はそれほど変わらないようです。このため、新型コロナの発熱を警戒するための計測なら手首でも良いです。
この機種には「モードボタン」というものがあり、飲み物の温度を測ったりすることが出来ます。使い方は体温を計るおでこと一緒で、コップへ向けて計るだけです。